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XBRLとは
XBRL(eXtensible Business Reporting Language)は、各種事業報告用の情報(財務・経営・投資などの様々な情報)を作成・流通・利用できるように標準化されたXMLベースのコンピュータ言語です。特に、組織における財務情報・開示情報(財務諸表や内部報告など)の記述に適しています。
たとえば財務情報は、年度ごと、あるいは組織や業種ごとに、文書構造や項目、計算式などが異なるといった特徴があります。このため、従来の作成方式では作成コストがかかるだけでなく、共通化や二次利用が困難です。XBRLを用いることにより、ソフトウェアやプラットフォームの壁を越えて、電子的な事業報告の作成や流通・再利用を容易に行うことが可能になります。その結果として、企業、会計専門家、監督機関、アナリスト、投資家、資本市場参加者、ソフトウェアベンダー、情報ベンダーなど、財務情報のサプライチェーンに関係するすべての当事者に、財務情報を取り扱うためのコストを削減させ、より正確でスピーディーな情報処理が可能となります。特にインターネット上に公開されている財務情報については、データの精度が向上するだけでなく、他のコンピュータシステムでの再利用が容易になることにより、その価値が飛躍的に高まるという効用もあります。
このようなメリットを実現するキーとなっているのは、「標準化」です。XBRLの普及の中心的役割を担っているのは、XBRL Internationalという非営利の世界的なコンソーシアムであり、IFRS(国際財務報告基準)を策定しているIASB(International Accounting Standards Board)をはじめ、財務情報サプライチェーンに関係する各種企業・団体がそのメンバーとなり、XBRLの標準化と普及を全世界レベルで強力に推し進めています。会計基準ではIFRSを自国の会計基準として採用する国が急速に広まっていますが、財務諸表を中心とする財務情報の作成・流通・利用を可能とする技術は全世界でもXBRLをおいて他にはなく、世界中の関心が確実に高まっています。
金融の機能を人間の身体になぞらえて、身体の各器官に栄養分や酸素を送り届ける「血液」と同じであるというのは、よく聞く喩え話です。
それでは、金融業における「血液」の役割とは何でしょうか。金融業はお金の仲介を行う産業であり、金融業における「血液」の役割とは、お金にまつわる「情報」を伝達することと定義できます。お金にまつわる情報についてもう少し詳しく見ると、(1)「お金のやりとりに関する情報(金融取引情報)」と(2)「お金の所有者や利用者(出し手や借り手)に関する情報(財務情報やリスク管理情報などの意思決定に必要な情報)」に分けることができます。
金融業の歴史は、この2大情報を効率的に制御・管理することの歴史であったといっても過言ではありません。情報管理は、まず(1)の金融取引の分野から着手されました。それは、オンライン化等の業務のコンピュータ化であり、大量の取引を効率よく処理し、お金の所有者と利用者を効率よく結びつけることを目的としていました。近年、決済リスク削減のため、金融取引の開始時点から決済まで一元的に処理するSTP(ストレート・スルー・プロセッシング)が金融機関のリスク管理にとって重要になってきています。特に直接金融においては一連の取引処理過程を外部(取引所や振替機関等)に依存している度合いが高いため、STPが主要な経営課題として認識されています。
STPの概念が導入され、金融取引分野の効率化に一定のゴールが見えてくるようになって、新たに意識されるようになったのが、財務情報やリスク管理情報等の意思決定に必要な(2)の情報の効率化です。インターネットの普及によって社会変動の波が短期化し、従来までの紙ベースの情報では、意思決定を効率化しようにも限界があることが認識されたからです。意思決定の分野は、プロセスが定型的な事務処理ではなく、さまざまなデータを集めてアドホックに分析されることが多いためシステム間を固定的につないでしまうのではなく、システム間の情報交換において標準的なデータ交換のプロトコルを決めることがより効率的であると考えることができます。
そこで意思決定に必要な「財務情報」の効率的な管理手段として注目を浴びるようになったのが「XBRL」なのです。
「XBRL」標準で定義された財務データが、まず提出側の企業によってコンピュータに入力され、財務情報の用途に応じてコンピュータ同士が会話することによって、金融業界を構成する各機関をくまなく駆け巡ります。あたかも「血液」のように。
サプライチェーン内のデータは再入力する過程がありませんので、情報の提出側から受取側までの到達時間は短く、データは途中で改ざんされずに、関係各方面に瞬時に到達します。更にこのデータは、直接ダウンロードされてデータ分析のプロセスまで到達します。
あたかも財務情報という「血液」が流れている動脈が、身体の臓器である各種の金融サービスに財務データという酸素や栄養素を届けているようなイメージです。更にこの財務データは、受け手に伝わりレポート作成、リスク管理、情報開示、税務申告など必要に応じて加工されていきます。この姿がXBRLを用いた財務情報のサプライチェーンです。